「Gueto Capoeira Workshop in Osaka – Capoeira de Saia」7/3(土) 黄帯 ナガイ

東京・新宿区、渋谷区で教室活動するカポエイラ・テンポ(カポエラ)のみんなが書くブログ。 練習やイベント情報、ブラジル日記やメディア裏話も!
2010/09/20(月)
7月3日、暦はもう夏なのに梅雨の延長のような雨の日でした。大阪の西成区の大通りは閑散として人っ子ひとりいません。久しぶりの大阪遠征に向かった、タリちゃんと私は、インクジェットで出力したために雨に滲んでしまった地図を見ながら、ワークショップの会場の西成区民センターを探して、雨の中をうろうろしています。ジーンズの裾に水がバッチリ浸み込んで、重さが増せば増すほど、朝から筋トレをしている気分です。もう昼に近いというのに静まりかえった街をさまよい、やっと区民センターに到着したころには、ようやく雨も小降りになっていました。学校のように大きな建物のなかでは、いたるところでシニアのおじさま方が囲碁に興じ、おばさま方は盆踊りに興じ、思い思いの土曜日の憩いの場になっています。

7月3日4日、大阪で金沢を拠点とするGUETO CAPORIRA主催のワークショップが行われました。GUETO CAPOEIRAはグルーポ・テンポと同じ、サルバドールを拠点にするグループ。その日本の拠点が金沢にあるGUETO CAPOEIRAです。

今回のワークショップは二日間にわたるものでしたが、初日はGUETO本部から来日したメストラ(女性のMestreだから、Mestraです)ブリーザによるワークショップ、名付けて「Capoeira de Saia」です。Saiaとはポルトガル語でスカートという意味。女性でカポエィラをすることについて・・・という意味が込められているようです。まずは、メストラ(!)という言葉を聞いて、ありそうでなかった初めて耳にする響きにわくわくしました。「会ってみたい!」という気持ちを抑えきれず、大阪までやってきたというわけです。

Mestra Brisa

カポエィラを始めて、緑帯をとったころでしょうか。普段の生活ではそれほど意識したことはなかったけど、「うーん。とはいえ、自分は女性だしな・・・。」ということを感じ始めました。つまり、男の人とまったく同等にカポエィラをしようとしてもだめなのではないかと。それまでは、基本の動きをひたすら覚えて、実践して、ジョーゴしてという流れが楽しくてしょうがなく、あまり考えたことがなかったのですが、次第に技が複雑になり、アクロバシーアも加わり始めると、女性であることの特徴と違いが心身ともにのしかかってくるのです。腕の力の乏しさ、重心の違い(どんなに痩せ型の女性とはいえ、脂肪や贅肉は男の人より多いでしょう)、身長、メタボリズム。そもそも、カポエィラは「勝つ」ためのものではないので、無理に男性を超える必要などありません。ただ充実したジョーゴをするには、男性にはない特徴を生かし、弱みを強みに変えられるような動きを発明する必要があるのでは・・・。緑帯に上がるアヴァリアサオンのときも、黄色帯に上がるアヴァリアサオンのときも、そのたびにプロフェッソール・フラカォンから「女性でカポエィラをすることについてどう思うか」と質問されました。それだけに、カポエィラを続ける上でのキーワードのような気がしてなりませんでした。

女性カポエィリスタのためのワークショップとの名目ですが、実際、女性と同じくらいの男性カポエィリスタも参加していました。メストラ・ブリーザがはじめた「Capoeira de Saia」は、女性カポエィリスタであれば誰でも参加できる活動で、カポエィラの練習やホーダをはじめ、女性としてどのようにカポエィラと関わっていくかということを分かち合う機会でもあります。この活動の特徴は、グループ同士の垣根がないということ。女性カポエィリスタがグループの違いを超えて、同じ時間を分かち合うということです。

メストラ・ブリーザ褐色の肌に愛くるしい瞳をもった、チャーミングの女性です。長い髪の毛をクルクルともてあそびながら、いろいろな人の話しに耳を傾け、話の終わりはいつも大笑い。彼女の存在だけで、その場の空気がとたんに和やかなものになり、カポエィラを取り巻く雰囲気全体が柔らかく明るくなるような気がしました。

メストラ・ブリーザのワークショップはまず彼女の講義からはじまりました。
「カポエィラとは誰でもできるもの。自由なスポーツです。ただ、女性がカポエィラを続けるにあたって、男性には思いもよらないような難しさに直面することがあります。力の弱さ、胸や臀部に贅肉が多くて重心が違うこと。そういった身体の特徴の違いにはじまり、妊娠初期は特に激しい運動がしにくいこと、また子供が生まれると練習に時間を割きにくくなること。もちろん、子供を抱える身として、怪我なども不意にできなくなります。こういった、社会的な事情がいろいろ生じてきます。」

メストラ・ブリーザはそんな前置きをした上で、自分がメストラになるまでの経験を語りました。
「小さい頃にカポエィラを初めてから、今まで三つのグループを転々としました。ところが、早くに子供を授かり、そのあとは働きながら大学に行くという生活に突入。いくらサルバドールにいようと小さな子供を抱えながら、練習時間を確保するということは本当に大変なことでした。そんななか、子供を近所の人に「1時間だけ!」といいながら預け、夜10時から11時までの1時間はカポエィラに割くという生活を続けてきました。短い時間でも、続けること。それが大事なのです。」

今では二人の子供を育てながら、Mestraという立場で自分ができることをポジティブに意欲的に伝えるブリーザの目には涙が溢れていました。ブリーザは自分の話に一息ついて、今度は参加者に質問を投げかけました。「今までカポエィラを続けてきて、困難に思ったことは何か?」その答えは、予想どおりいろいろでした。
「白いカウサを着ると下着が透ける」
という、妙に所帯じみた問題から、
「家族にカポエィラを理解してもらえない。宗教だと思われる。」
「自分は教えることがあまり好きではないけど、帯が上がると教えなくてはならないことに違和感を感じる。」
と、思わずうなずいてしまう問題もありました。みんな同じようなことを考えているんだな、ということに納得しました。

メストラ・ブリーザはどの質問にも深くうなずき、「Entao!」という言葉に続いて、ひとつひとつに丁寧に答えていきました。その姿勢は「すべての問題はみんなと分かち合うことができる」ということを伝えているようで、「重要なのは問題を分かちあうこと。それができれば必ずしも解決しなくても、大丈夫」ということを伝えているようでした。

講義に続いては、サンバのワークショップです。ステージの上に上がったブリーザは、まずは、サンバの起源ともいうべき、サント・アマ―ロのステップをデモンストレーションしてくれました。大きく腰やお尻を動かすのではなく、細やかな足のステップから段々と波のように体幹にリズムが流れるのを感じること。これがサント・アマ―ロのステップです。下半身のリズムに心地よくついていくように、お手本をブリーザのかわいらしいこと、美しいこと。

「サンバは、円のなかで、男の人と女の人が対になって踊ること。女の人は人々を魅了するように踊って、男の人はそんな女の人を誘うようにパフォーマンスをすることよ。」
その場の雰囲気のようにも聞こえますが、ブリーザはこれを特訓にしてしまいます。生徒を男性パートと女性パートに分け、男性パートは女性を誘うサンバ、女性パートは魅力的に踊るサンバを自分で考えて踊るというものです。二列になって、それぞれの列で向かい合って、男役と女役をする姿は、それがサンバとはわからなければ、妙なオカマ演劇のようです。ところが、重要なのはステップよりも創造力。この練習が役立ったのか、本番でのみなのアドリブの想像力たるや見事なパフォーマーでした。ホーダのなかには、女の人も男の人も両方不可欠なのはこんな理由もあるのですね。

dia1 briza samba lesson

その日のワークショップはブリーザの存在感もあり、和やかに進み、最後のRODAは空前絶後の大盛り上がりでした。(その様子は、次の報告にて・・・)。

ワークショップのあと、どうしても気になる質問があり、ブリーザを捕まえて聞いてみました。ケーダについてです。男性と女性の間に力の差や身体の大きさの差があるなかで、女性がするケーダについてどう考えるかということです。ブリーザは質問を聞きながら、途中で「そう、その質問が来ると思ったわ」といわんばかりの笑みを浮かべ、大きくうなずいて言いました。
「ケーダをするときは、本当に気をつけなくてはならないのよ。私も妊娠中でお腹が大きいときに、思いっきりケーダを掛けられて、本当に背筋が凍る思いもしたことがあるの。今でも思い出したくないぐらい怖かった。ケーダをするときは、まず相手がどんなカポエィリスタかということを見て行わないといけない。そして、必要以上に行わない。でもね、ケーダというものは本当は美しいものなのよ。相手が正しければね。」
相手を見極めること、これがケーダの技を磨くことと同じくらい重要なこと。これは、テンポのメストレ・トニーにもいつも言われていたことだけど、ブリーザから言われると、さらに説得力があるような気がしました。よいケーダは仕掛けるほうも、転ぶほうも、息を呑むほど美しいものなのです。

この答えには、「僕にも詳しく教えて!」と近くにいたGueto の代表マッチくんも身を乗り出すように聞いていました。確かに女性の視点は、男性にとっても普通の練習だけでは、肌身で感じることはできないことです。女性も子供も精一杯できるカポエィラを実現することに対するマッチくんの情熱には心を打つものがありました。ちなみに彼はサンバをメストラ・ブリーザに徹底的に仕込まれたとのこと。それもそのはず、サンバのときの駆け引きの上手さは「うーん、なるほど!」とうなずいてしまうほどでした。
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